タイの華僑の過半数を占める56%が広東省北部にルーツを持つ潮州人ですが、16%と少数の客家人の存在を忘れるわけにはいきません。

スポンサーリンク




客家は漢民族の一支流で周から春秋戦国時代の戦乱のさなかに、中原から南へ移動と定住を繰り返してきました。中国では主に福建省南部と広東省北部に多く住んでいて客家土楼の円形集合住宅は観光スポットとしても知られ、そのほか山西省や四川省に加え海南省にも客家集落があります。

客家のルーツを持つ日本人では、『おくりびと』や『武士の献立』など数々の映画やテレビドラマに出演した女優の余貴美子が挙げられます。

台湾の客家では、20世紀の優秀なアジアのリーダーのひとりに挙げられる李登輝や絶大な人気を誇るアイドルで、顔や声の質が日本人とよく似ている王心凌が有名です。

ハジャイの街角

中国では日本でもお馴染みの孫文や国共内戦で台湾へ逃亡した蒋介石の奥様の宋美人姉妹、近代中国の父と称される鄧小平といった枚挙に暇がないです。

タイではタイ国鉄南部線の建設の功労者として名高い謝枢泗と国外逃亡中ですが、イサーンでは今でも圧倒的な支持を得るチナワット家の前首相のタクシンとインラックが有名です。

日本の中の中国史では殷と表記されている商は中国最初の王朝ですが、周によって滅ぼされました。商王朝の商の英語ではビジネスマンに当たる商売人のルーツとされ、戦乱の時代にでさえも生き伸びる強さと智恵を兼ね備えたのも客家といえます。

ナコーンサワーンの街角

ラーマ6世はタイ華僑のことを『東洋のユダヤ人』と批判し、特に客家人のことを指していたとされています。同様に華僑を現地のタイ人への同化政策を行なったことで、義務教育では華僑学校でさえも中国語が禁止となりました。それにより東南アジアの中でも中国語を話せる人の数が極端に少ないのがタイで、今では中国と台湾に留学する若い人たちが多いです。

タクシンはカリスマ性を発揮し、中でも所得の少ない国民を対象とした日本円にして1回につき約100円で何度も治療を受けられ入院もできる「30バーツ医療制度」は人々のハートを掴みました。

バンコクの街並み

AISという携帯電話会社の全国展開で成功を収め、一時期はイギリスのプレミアリーグのサッカークラブを買収したほどです。ミャンマー南部のダウェー経済特区の開発と日本からの資金援助獲得に成功したのが妹のインラックです。その後、タイを東西経済回廊の重要な拠点と位置付け、隣国へ数々のタイ資本の会社が進出したきっかけを作ったといっても良いでしょう。

一条龍という言葉がありますが、客家の人たちをはじめ華僑の経営者は、仕入れから生産や流通、販売に至るまで多角経営を一本化して事業を拡大していくのが上手いです。

スポンサーリンク